○県央地域広域市町村圏組合火災調査規程

平成18年12月20日

消防長訓令第3号

目次

第1章 総則(第1条―第3条)

第2章 調査の区分及び実施主体(第4条―第10条)

第3章 現場保存(第11条―第13条)

第4章 報告・調書・立会い等(第14条―第19条)

第5章 証拠・保管物件の処理と試験・鑑定(第20条―第25条)

第6章 損害調査(第26条―第28条)

第7章 調査経過報告・原因の判定(第29条―第32条)

第8章 調査の限界等(第33条・第34条)

第9章 雑則(第35条―第38条)

附則

第1章 総則

(趣旨)

第1条 この規程は、消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第7章の規定に基づく火災の調査(以下「調査」という。)について必要な事項を定めるものとする。

(調査の目的)

第2条 調査は、火災の原因及び火災により受けた損害を明らかにして、火災予防対策及び警防対策に必要な基礎資料を得ることを目的とする。

(用語の意義)

第3条 この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 火災 人の意図に反して発生し、若しくは拡大し、又は放火により発生した消火の必要がある燃焼現象であつて、これを消火するために消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの又は人の意図に反して発生し、若しくは拡大した爆発現象をいう。

(2) 建物火災 建物(土地に定着する工作物のうち屋根及び柱若しくは壁を有するもの、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物に設けた事務所、店舗、興業場、倉庫その他これらに類する施設をいう。ただし、貯蔵槽その他これに類する施設を除く。)又はその収容物(原則として柱、壁等の区画の中心線で囲まれた部分に収容されている物をいう。)が焼損した火災をいう。

(3) 林野火災 森林(木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹と、これらの土地以外で木竹の集団的な育成生育に供される土地をいう。ただし、主として農地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地及びこれらの上にある立木竹を除く。)、原野(雑草、灌木類が自然に育成している土地で人が利用しないものをいう。)又は牧野(主として家畜の放牧又は家畜の肥料若しくは敷料の採取の目的に供される土地(耕地の目的に供される土地を除く。)をいう。)が焼損した火災をいう。

(4) 車両火災 自動車車両(鉄道車両以外の車両で、原動機によつて運行することができる車両をいう。)、鉄道車両(鉄道事業法(昭和61年法律第92号)における旅客、貨物の運送を行うための車両又はこれに類する車両をいう。)及び被けん引車又はこれらの積載物が焼損した火災をいう。

(5) 船舶火災 船舶(独行機能を有する帆船、汽船及び端舟並びに独行機能を有しない住居船、倉庫船、はしけ等をいう。)又はその積載物が焼損した火災をいう。

(6) 航空機火災 航空機(人が乗つて航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船等の機器をいう。)又はその積載物が焼損した火災をいう。

(7) その他の火災 第2号から前号までに掲げる火災以外の火災(空地、田畑、道路、河川敷、ごみ集積場、屋外物品集積場、軌道敷、電柱類等の火災)をいう。

(8) 爆発 人の意図に反して発生し、又は拡大した爆発現象(化学的変化による爆発の一つの形態であり、急速に進行する化学反応によつて多量のガスと熱とを発生し、爆鳴・火炎及び破壊作用を伴う現象をいう。)をいう。

(9) 発火源 出火に直接関係し、又はそれ自体から出火したものをいう。

(10) 経過 出火に関係した現象、状態又は行為をいう。

(11) 着火物 発火源によつて最初に着火した物をいう。

第2章 調査の区分及び実施主体等

(調査の区分)

第4条 調査は、火災原因調査及び火災損害調査に区分する。

2 火災原因調査は、次の各号に掲げる事項を究明するために行うものとする。

(1) 出火前の状況

(2) 火災原因

(3) 延焼拡大の状況

(4) 初期消火等の状況

(5) 避難の状況

(6) 消防用設備等又は特殊消防用設備等の状況

(7) 死傷者の状況

(8) その他必要な事項

3 火災損害調査は、次の各号に掲げる事項を明らかにするために行うものとする。

(1) 焼き損害 火災による焼損又は熱による破損等の損害

(2) 消火損害 消火のために受けた水損、破損又は汚損等の損害

(3) 爆発損害 爆発現象の破壊作用により受けた損害のうち前2号に掲げる損害以外の損害

(4) 火災による死傷者 火災及び消火活動、避難行動その他の行動により死亡し、又は負傷した者

(調査の主体)

第5条 調査の主体は、消防署長(以下「署長」という。)とし、消防長は、署長に対して調査遂行上必要な指示を与えるものとする。

(調査本部の設置)

第6条 消防長は、火災の形態により調査を機動的かつ効果的に実施するため、特に必要があると認めたときは、関係機関と協議の上、調査本部を設置することができる。

2 調査本部において行う事務は、おおむね次のとおりとする。

(1) 火災状況の把握

(2) 調査区域の決定

(3) 関係機関との協議(情報交換)

(4) 調査方針及び進行計画の樹立決定

(5) 調査結果の検討

(6) 報道関係者への情報提供

(7) その他必要事項

3 消防長は、調査本部を設置したときは、第5条第1項の規定にかかわらず、その都度その調査の主体となる者を定めるものとする。

(調査の実施及び火災原因調査担当(併任)の派遣)

第7条 署長は、管轄区域内に火災を覚知したときは、直ちに調査に着手しなければならない。

2 署長は、所轄消防署の職員のうちから調査員を指定して調査に従事させるものとする。

3 消防長は、所轄消防署長の要請があつたとき又は特に必要があると認めたときは、消防長があらかじめ指名している火災原因調査担当(併任)の職員のうちから調査員を指定して調査に従事させることができる。

4 前項に定める火災原因調査担当(併任)の指名及び派遣等の事務は、別に定める県央地域広域市町村圏組合消防本部火災原因調査担当の指名等要綱に基づき行う。

(調査員の心得)

第8条 調査員は、火災現象、関係法令等調査に必要な知識の習得及び調査技術の向上に努めるとともに、次の各号に掲げる事項を遵守しなければならない。

(1) 調査員相互の連絡を図り、調査業務の進行が円滑になるように努めること。

(2) 調査に際し、関係者の民事的紛争に関与しないように努めるとともに、個人の自由・権利を不当に侵害したり、調査上知り得た秘密をみだりに他に漏らさないこと。

(3) 関係のある場所へ立ち入るときは、原則として関係者の立会いを得ること。

(4) 警察機関その他の関係機関と密接な連絡をとり、相互に協力して調査を進めること。

(調査の原則)

第9条 調査は、物的調査と人的調査を相関的に併せて行わなければならない。ただし、火災原因決定に当たつては、物的調査に主眼をおかなければならない。

2 調査員は、先入観念にとらわれることなく、理化学的な方法及び合理的な判断により、火災の実態の把握に努め、燃焼過程をたどり、発火点を求め、発火源を明らかにして、原因を究明しなければならない。

(炎上中の調査)

第10条 調査員及び消防隊員は、出場途上及び炎上中の現場において、火煙の色、臭い、燃焼の音等の特徴、火災の経過、関係者の動向その他必要な事項を把握し、火災原因の判定に必要と認められるものについて、火災出場時における見分調書(様式第1号)に記録しなければならない。

第3章 現場保存

(消火活動中の現場の保存)

第11条 消防隊の指揮者及びその隊員は、出火点と認められる場所及びその付近の消火活動に当たつては、細心の注意を払い、その原状の保存に努めなければならない。

2 消防隊の指揮者及びその隊員は、残火鎮圧に際して、火元と認められる箇所及びその付近の物件を移動し、又はその原状を変更する場合は、写真又は見取図を作成する等の方法を講じて、事後の調査に支障をきたさないように処置しなければならない。

(鎮火後の留意事項)

第12条 現場最高指揮者は、消火活動が終了したときは、直ちに次に掲げるところにより確実に現場保存するよう処置を講じなければならない。ただし、調査上その必要がないと認められるときは、この限りでない。

(1) 警察職員と協議して区域を決定し、相互に協力して現場保存に当たること。

(2) 現場保存区域は、縄張又は張札等によりこれを標示すること。

(3) 現場保存区域には、監視員を配置し、原因調査を開始するまでの間、一定区域の立入りを禁止すること。

(4) 死傷者若しくは変死者等があると認めたとき又はこれらが予見されるときは、その旨を速やかに消防長又は署長に報告し、所轄警察署長に通知するとともに、写真、見取図その他の方法により現場保存に努めること。

(監視員の留意事項)

第13条 前条第3号の規定により監視員を命ぜられた者は、次に掲げる事項を遵守しなければならない。

(1) 現場区域において、みだりに現場の物件に手を触れ、又はその原状を変更することのないよう努めること。

(2) やむを得ない事由により、物件に手を触れ又はその原状を変更する必要があるときは、指揮者の承認を受け、消防、警察両者立会いの上、調査に支障を来たさないよう適当な処置を講ずること。

(3) 現場区域においては、喫煙したり、たばこの吸い殻、マッチのすり軸を捨てたり、その他の者に対し、調査上支障を来たすような行為を防止すること。

第4章 報告・調査・立会い等

(火災速報書)

第14条 署長は、消火活動が終了したときには、速やかに火災速報書(様式第2号)により、消防長に報告しなければならない。

(物的調査)

第15条 物的調査は、次に掲げる事項につき、必要な根拠に基づき、詳細に行わなければならない。

(1) 発火及び出火時刻の推定

(2) 気象状況

(3) 現場を中心とする付近の状況

(4) 出火前の建物又は工作物及びその他の状況

(5) 消火活動の状況

(6) 燃焼状況

(7) 発掘状況

(8) 出火点及び発火点

(9) 発火源、経過及び着火物

(人的調査)

第16条 人的調査は、時期を失しないよう現場又は適当な場所において、早期発見者、火元責任者その他関係ある者に対して、出火前後の模様、火気その他発火物と思われるものの使用、取扱い等火災原因判定上必要と認められる事項について質問するなどの調査を行うものとする。

2 前項の規定により調査した事項は、火災原因又は出火点等の判定の資料にしなければならない。

(質問調書)

第17条 調査員は、前条の質問により知り得た事項で、原因の判定又は立証に必要であると認めるものは、質問調書(様式第3号)に記録しなければならない。

2 前項の質問は、被質問者の任意かつ自由な状態で行い、これを強制してはならない。

3 少年(18歳未満の者をいう。以下同じ。)、心神喪失若しくは心神耗弱の状態にある者又はこれらに準ずる者に対して質問する場合は、立会人を置いて行うものとする。ただし、立会人を置くことにより真実の供述が得られないと認められる場合は、この限りでない。

4 質問調書を作成したときは被質問者(第3項にいう立会人を含む。)に対し、これを閲覧させ、又は読み聞かせ、誤りのないことを確認した上、署名を求めるものとする。

(実況見分調書)

第18条 調査員は、火災現場の実況を見分したときは、実況見分調書(様式第4号)にそのてんまつを記録しなければならない。ただし、文章による表現が困難な場合には、写真、略図等を用いて補足することができる。

(関係者の立会い)

第19条 調査員は、前条の見分に当たつて、必要に応じ、関係のある場所の所有者、管理者、占有者その他関係者の立会いを求めて実施し、調査の適正化を期さなければならない。ただし、少年は諸般の事情を考慮して支障がないと認められる場合を除き、立会人としてはならない。

第5章 証拠・保管物件の処理と試験・鑑定

(証拠物件の取扱い)

第20条 調査員は、火災現場において必要な証拠物件の収集を行うとともに、写真撮影、模写等によりその保全に努めなければならない。

2 前項の写真は、火災調査書、火災原因判定書、実況見分調書及び現場写真台帳(様式第5号第6号)に貼り付け、必要な説明を加えなければならない。

3 調査員は、火災現場の発掘に当たつては、細心の注意を払い、特に証拠物件の取扱いについては、き損、紛失、変質等のないよう適当な方法を講じなければならない。

4 火災原因の決定又は立証のため、特に必要と認められる付近の発掘又は物件の移動等に当たつては、写真撮影等によつて発掘又は移動前の状況を把握しておかなければならない。

(資料又は報告書の提出命令)

第21条 法第34条に規定する資料の提出又は報告を命ずるときは、資料提出命令書(様式第7号)又は報告書提出命令書(様式第8号)によるものとする。

2 署長は、前項の規定により資料が提出されたときは、保管書(様式第9号)を関係者に交付しなければならない。ただし、関係者が所有権を放棄したものについては、この限りでない。

(保管物件の処理)

第22条 保管する証拠物件又は資料には、物件(資料)保管標札(様式第10号)を付するとともに、保管台帳(様式第11号)に記載し、汚損又は変形等が生じないよう慎重に取り扱い、その処理結果を明らかにしておかなければならない。

2 保管場所は、外部の者が容易に触れることがない場所とし、保管期限は調査に必要な最少限度の日数とする。

3 返還希望の証拠物件で、調査が終了し、保管の必要がなくなつたときは、保管物還付請書(様式第12号)を徴して返還するものとする。

(官公署への照会)

第23条 法第32条第2項の規定による官公署への照会は、火災調査事項照会書(様式第13号)により行わなければならない。

(試験)

第24条 調査員は、提出された資料その他の参考資料について試験を行おうとするときは、署長の指示を受けるとともに、その結果を試験結果報告書(様式第14号)に記載しておかなければならない。

(試験又は鑑定の依頼)

第25条 署長は、調査のため必要があるときは、官公署又は学識経験者に対し、試験(鑑定)依頼書(様式第15号)により試験又は鑑定を依頼することができる。

2 前項の鑑定のため原形が変形し、又は消滅するおそれがあるときは、あらかじめ鑑定物件の所有者又は責任者から鑑定処分承諾書(様式第16号)を徴しておかなければならない。ただし、返還希望のないものについては、この限りでない。

第6章 損害調査

(調査の対象)

第26条 火災損害調査は、火災及び消火のために受けたすべての財産について行い、その状況を明らかにしておかなければならない。

(損害届)

第27条 署長は、損害額決定のための資料として、関係者から損害の程度について報告を求めるときは、損害届(様式第17号)を提出させるものとする。

(損害額の算出)

第28条 損害額は、損害届及び火災報告取扱要領(昭和43年消防総発第393号消防庁長官通知)別表第4「損害額の算出基準」を参考とした、確実な調査資料に基づいて算出するものとする。

第7章 調査経過報告・原因の判定

(経過の報告)

第29条 署長は、調査を実施したときは、その過程の調査概要を消防長に報告するものとする。

(火災調査書)

第30条 調査員は、火災原因調査を行つたときは、火災調査書(様式第18号)を60日以内に作成しなければならない。ただし部分焼程度の小規模な火災で出火原因が明白であるような火災については、30日以内に作成するものとする。

2 調査員は、火災調査書を作成するときは、次の各号に掲げる書類を添付して行わなければならない。ただし、軽微な火災については、添付書類の一部を省略することができる。

(1) 火災原因判定書(様式第19号)

(2) 火災出場時における見分調書(様式第1号)

(3) 質問調書(様式第3号)

(4) 実況見分調書(様式第4号)

 現場付近見取図

 出火建物平面図

 出火箇所付近の物品配置図

 復元図

 現場写真台帳(様式第5号様式第6号)

(5) 試験結果報告書(様式第14号)

(6) 損害届(様式第17号)

(7) 防火管理等調査書(様式第20号)

(8) 損害調査書(様式第21号)

(9) 損害額算出表(様式第22号)

(10) 死体見分調書(様式第23号)

(11) 関係者提出の報告書

(12) 火災事項回答書

(13) その他の参考書類

(原因の判定)

第31条 火災原因の判定は、火災の実況見分、質問、その他の関係資料等を総合的に検討し、判定するものとし、物的調査、人的調査による資料により裏付けるものとする。

(消防庁への報告)

第32条 消防組織法(昭和22年法律第226号)第40条に規定する消防統計及び消防情報については、火災報告取扱要領に従い、処理しなければならない。

第8章 調査の限界等

(調査の限界等)

第33条 調査は法に定める事項に限り行うものであつて、犯罪の捜査に関与してはならない。

2 この規程の運用にあたつては、憲法の精神を尊重し、他の関係法令の規定に抵触しないように注意しなければならない。

(照会)

第34条 署長は、火災原因その他調査事項について官公署等から照会があつたときは、その内容、目的その他必要な理由について審査の上、必要事項について回答することができる。

第9章 雑則

(調査結果の活用)

第35条 調査員は、調査を終了したときは、調査方法及び調査過程等に反省検討を加えるとともに、調査によつて得た各種の事項を整理して、火災の予防及び警防業務に活用するよう努めなければならない。

(調査の服装)

第36条 調査員は、調査を行うに当たり、消防長又は署長が特に必要と認めたときは、私服を着用することができる。

(書類の保存)

第37条 調査書は、県央地域広域市町村圏組合文書取扱規程(昭和46年規程第3号)に基づき、保存するものとする。

(施行細則)

第38条 この規程の運用に必要な事項は、別に定める。

この訓令は、平成19年1月1日から施行する。

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県央地域広域市町村圏組合火災調査規程

平成18年12月20日 消防長訓令第3号

(平成19年1月1日施行)

体系情報
第7編 防/第3章 火災予防
沿革情報
平成18年12月20日 消防長訓令第3号